『引っ越しが多いと自分のアイデンティティを保つことが難しくなかった?』
少し前にとあるお方からこの質問を受けました。
このご質問、私にとっては「ぐっ」とくる質問なのです。
「私が悩んでいたことをなんでご存じなんだろう?」
きっとこの方の周囲に、同じような悩みを持たれていた人がたくさんいらっしゃったのだと思います。
何かの役に立つかもしれないので、このことも書いておくことにします。
「私を『私』たらしめるものが3年おきに無くなる」
父の仕事の都合で生まれてから高校を卒業するまで、ほぼ3年おきに全国あちこちを引っ越していました。
自分の意思とは関係なく、学校が変わるたびにご近所の友達、クラスなどでの私のポジション(立ち位置というのか・・・)が変わります。
「私は1年A組に所属し、吹奏楽部でトランペットを吹いています。習い事はピアノとお習字とそろばん。週に3日塾に行きます」
大方の人が自己紹介のときにこういったことを話すと思うのですが、私は自己紹介のときに何を話してよいかわからない・・・とよく考えている子供でした。
小学校入学で1回、中学入学で1回、高校入学で1回変わるくらいだと思うのですが、私は小学校を4校、中学校、高校も転校をしていて、計8校に行っています。1年半おきに通う学校が変わることもありました。同じ学校に3年間通った記憶がありません。
「私を『私』たらしめるものが1年半おきに無くなる」
自分の意思とは関係なく、外からの影響で動かされること。これは想像以上に疲れることです。
さらに、子供の頃は1年の時間が経つのがとても長いです。大人だとあっという間なのに・・・。
物心つくかつかないかくらいの年齢から、これを3年置きにやっていた自分を心から讃えてやりたいです。
変わるポジションに対して、自分を合わせていくこともできていたのですが、これを続けていると
「『私』って何なんだろう。誰なんだろう。私はどこの人なんだろう。ここにいていいのだろうか」
そんな疑問が頭の中でずっと回り続けます。
『私って何なんだろう、誰なんだろう』
考え続けた結果、結局、
「私は地球の日本というところに住んでいる人間だ」
と解決するしかありませんでした。
この回答へのヒントをくれたのは、「集合的無意識」を論じるユング、河合隼雄さんの著作や、考古学、日本史の本でした。
世界中、どんなところでもどんな人でも、集合的無意識につながっている。そこに行き着くと、クラスで何をしていようが、部活で何をしていようが、あまり気にすることではなくなってきます。
「日本人」という枠組みを作ってしまうことが馬鹿らしく思えるくらい、日本列島には海を通して様々な民族の人が移り住んできていました。大陸から、南洋の島々から。
そんな中で、日本という小さな島の「XXに住んで●●学校に通って、++という部活をしている・・・」ということに、いちいちこだわるのもバカバカしく思えてきます。それを教えてくれたのが、考古学や日本史の本でした。
たぶん同年代の子たちはそんなことは考えもしないと思うのですが・・・。そんな子たちが気がつかないことに気がついている自分を誉めてもいいと思います。
その子たちが決して持っていない体験を自分はしています。それに自信を持っていい。
それでいいのではないかと思います。
これは大人になってからだから言えることですが・・・。大人になってからの1年間はとても短く感じます。ほんとうにあっというま。
子供時代の1年間はとても長く、辛く感じることも多かったですが、これを読んでいる人が子供さんで、この世からいなくなってしまいたいくらい悩んでいたら、もうちょっとだけ、大人になるまで我慢してみるのもいいと思います。
大人になると子供の頃にいろいろ考えた分、ラクになります。
子供の頃、こういうことを考えなかった人は、その分、大人になってから苦労するのではないかしら・・とも思います。
悩みの源をたどってみる
悩みは
「自分の意思、希望と反する変化が起こった」ことで起こります。
- 元気だったご両親の介護をする必要が出てきた
- 自分の言うことを聞いてくれない、勉強をしてくれないお子さん
- メールをくれない彼氏
- ご主人の浮気
- 職場で自分の居場所がない
- 会社が無くなった
- 会社で自分がどこまで出世するか、そろそろ見えてきた
- 会社を辞めたいけれど、家のローンや子供の教育費用がかかって身動きが取れない
等々、尽きません。
子供のころ悩まないで、大人になってから急にこういう問題にぶち当たり、どうしてよいかわからなくなり、身体も心も具合が悪くなる人がとても多いのです。
あちこち引っ越しをした人、転校をした人は、子供の頃から、「自分の意思とは無関係に起こる変化」にとても強いです。我慢する必要は決してないですが、外的変化が起こっても、多少のことではへっちゃらです。変化は当たり前のことです。
変わらないものなど何もない、全てのものが変化をしていきます。それを子供の頃から知っている人はとても強いです。
たぶん、それが一番大切な宝物となります。