【読書メモ】アノスミア わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語

大学卒業後、著者はシェフをめざすべくレストランで働き始めたが、ジョギング途中に交通事故にあう。

頭を強く打ったそうで、その拍子に嗅神経が切断されて匂いを感じなくなってしまった。

いかんせんすべて頭蓋骨の中で起こったことなので「嗅神経が切断された」のかどうかも、何かを見て判断されたものではなく、
「たぶんそうだろう」というところのよう。何か検査や治療をするわけでもなく、「失った嗅覚を取り戻すことは非常に難しいです」と診察を終了されてしまうそうだ。酷なことだ。

それからの生活や感情の動きが細かく記されていて、著者は「嗅覚は情動と関係ある」ということを体感したようだ。

回復していくタイミングで、嗅いだ香りが何の香りであるのか、香りと名前をひも付けすることができなかったそう。
グラースの調香のクラスを受講して、香り⇔名前のひも付けをしなおしていくところを読むと、普段私たちが何気なく無意識に行っている「匂いを嗅ぐ」という行為が、何百何千という身体の中のプロセス(細胞、神経)、段階を踏んだ上での感覚であることがよくわかる。

著者がなんとかして嗅覚を取り戻そうとしている様子を読みながら、「がんばれー」と心の中でつぶやいていた。

事故が原因で嗅覚を失うと、それを回復できる可能性はあまりないそうで、著者はとてもラッキーな人の1人。

事故後、著者が最初に感じた香りは料理に使った「ローズマリーの生葉」の香りだった。カルシノン酸のおかげなのだろうか?
先日見たテレビ番組でも、ローズマリー精油に触れられており、軽度のアルツハイマーの症状の軽減に役立つという結果が出ているとのことだった。ローズマリーはもう少し丁寧に論文などを読んでみたい植物の1つ。

ウェブで他の方のレヴューを読んでいたところ、医療系専門職の方が「事故後、早い段階で抗生物質を投与すれば傷ついた神経が回復する」「著者が服用していた薬については記載されていないが、おそらく抗生物質も含まれていただろう」という旨を書かれていた。

ハーブの香りだけで回復した・・というわけでは決してないとは思うけれど、回復期に一番最初に著者の嗅神経を刺激した成分がローズマリーの成分だったというのはとても印象深かった。

文中の料理に関する表現が豊富。最初は香り中心だったものが、だんだん、色、食感の表現が増えてくる。シェフ志望だったこともあり、フレグランスだけでなく、フレーバーについても触れられていた。
嗅覚障害を持つアイスクリームメーカーのオーナーさんにもインタビューしていて、この人は自分が嗅覚障害があるので、自分が感じとれる味や食感を製品に取り入れることで成功したそう。「食感が面白い」食品は嗅覚障害がない人にとっても新鮮なこと。これもとても興味深かった。

Share

投稿者:

backyard

メディカルハーブ、アロマセラピー、ボディワークをベースに、体を健やかに保つ方法を考えています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です